
トラツグミ(Zoothera aurea)— 幻想的な鳴き声を持つ森の隠れた名鳥
トラツグミは、夜の森に響く独特な鳴き声と、美しい羽模様を持つ中型のツグミの仲間です。日本では主に本州、四国、九州に分布し、落葉広葉樹林や針葉樹林の下草が豊富な環境を好みます。夜間に「ヒィー…」という幽玄な鳴き声を発するため、**「鵺(ぬえ)」**という伝説の妖怪の正体と考えられることもあります。
1. 基本情報
- 学名:Zoothera aurea
- 英名:Scaly Thrush
- 分類:スズメ目 ヒタキ科
- 全長:約29~31cm
- 翼開長:50cm前後
- 体重:100~140g
- 分布:ユーラシア大陸東部(日本、中国、ロシア極東、朝鮮半島)
- 生息環境:落葉広葉樹林、針葉樹林、公園、低山地の森林
2. 特徴
外見
- 体全体に黒と黄褐色のウロコ模様があり、樹木の落ち葉の中に紛れやすい保護色になっている。
- 目が大きく、顔つきは比較的穏やか。
- 翼の裏側が白っぽく、飛び立つ際に目立つ特徴の一つ。
- 尾はやや長めで、飛ぶと扇状に広がる。
鳴き声
- 夜間に**「ヒィー…」**と長く伸びる、哀愁を帯びた鳴き声を発する。
- この鳴き声が「鵺(ぬえ)」の正体とされ、日本の伝説や怪談の題材になった。
- 普段はあまり鳴かず、警戒時には「グルルッ」と低く鳴くことがある。
3. 生態と行動
食性
- 主に地上で昆虫やミミズを探して捕食する。
- 秋冬には木の実や果実も食べる。
- 足で落ち葉をひっくり返しながらエサを探す姿がよく観察される。
繁殖
- 繁殖期は5~7月頃。
- 木の枝や茂みの中に巣を作り、2~4個の卵を産む。
- ヒナは孵化後約2週間で巣立つ。
- 人の気配を察知すると巣を放棄しやすいため、観察時には注意が必要。
飛行と移動
- 普段は地面で活動し、警戒すると素早く木の枝へ飛び移る。
- 冬には暖かい地域へ渡る個体もいるが、日本では主に留鳥または漂鳥として生息。
- 飛び立つときに翼の白い部分が目立つのが特徴的。
4. 日本での観察
- 主に本州、四国、九州の森林で見られる。
- 冬季には平地の公園や神社の林でも観察されることがある。
- 落ち葉の多い林床を歩きながら、ミミズを探している姿を見つけることができる。
- 夜間の鳴き声が特徴的なため、鳴き声での発見が容易。
5. 保護状況と人との関わり
保護状況
- 絶滅危惧種ではないが、森林伐採や都市化による生息地の減少が懸念される。
- 日本では比較的安定した個体数を維持している。
文化的な影響
- 「鵺(ぬえ)」の伝説に関連し、夜の森で聞く鳴き声が妖怪のように感じられることから、怪談の題材にもなっている。
- 和歌や俳句にも詠まれることがあるが、ツグミ類の中では比較的知名度が低い。
6. 近縁種との違い
種類 | 特徴 | 主な違い |
---|---|---|
トラツグミ | 黒と黄褐色のウロコ模様、夜鳴く | 日本の森林に多く生息、鵺の伝説に関係 |
ツグミ | 茶色とグレーの体色、昼間に活動 | より開けた環境で見られる、冬鳥として飛来 |
マミチャジナイ | オレンジ色の腹、翼に白いライン | 夏鳥として渡来し、樹上で活動することが多い |
まとめ
トラツグミは、日本の森林に生息する美しいウロコ模様を持つツグミの仲間で、夜間に響く幽玄な鳴き声が特徴的です。地面を歩きながら昆虫やミミズを探し、落ち葉をひっくり返す姿がよく観察されます。鳴き声は「鵺(ぬえ)」の伝説とも関係し、日本文化にも影響を与えています。森林伐採などの環境変化が懸念されますが、現在のところ安定した個体数を維持しており、全国の森でその姿を見つけることができます。
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