
ミヤコドリ(Haematopus ostralegus osculans)|干潟の貝をこじ開ける名ハンター
ミヤコドリは、鮮やかな赤いくちばしと黒白のコントラストが美しい shorebird(シギ類の仲間)です。主に干潟や浅瀬に生息し、貝類を器用にこじ開けて食べる独特の習性で知られています。日本では冬鳥として渡来し、特に東京湾や有明海、伊勢湾などで観察されます。
1. 基本情報










- 学名:Haematopus ostralegus osculans
- 英名:Eurasian Oystercatcher
- 分類:チドリ目 ミヤコドリ科
- 全長:約45cm
- 翼開長:約80〜86cm
- 分布:ユーラシア東部で繁殖し、日本には冬鳥として渡来
- 生息地:干潟、砂浜、磯、河口域
季節別の出現状況
季節 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
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ミヤコドリ | ◯ | ◯ | ◯ | ー | ー | ー | ー | ー | ー | ◯ | ◯ | ◯ |
2. 外見の特徴
- 体は黒と白のツートンカラー。
- 長くまっすぐな赤いくちばしが目立ち、貝をこじ開ける道具のよう。
- 足はピンク色でやや短く、干潟を歩くのに適している。
- 目は赤く、顔の黒い羽とのコントラストが鋭い印象を与える。
3. 鳴き声
- 「ピュイー、ピュイー」と甲高く響く声。
- 群れで鳴き交わすことが多く、干潟にその声がこだまする。
- 警戒時にはさらに大きな声で鳴き、仲間に危険を知らせる。
4. 生態と行動
食性
- 主に貝類を捕食。
- ムラサキイガイやアサリなどをくちばしでこじ開け、中身だけを食べる。
- 他にカニやゴカイなど小型の無脊椎動物も食べる。
習性
- 干潟や海岸に群れで現れることが多い。
- 低潮時に砂泥地を歩きながら餌を探す。
- 夜間にも採餌することがあり、活発に活動する。
5. 繁殖
- 繁殖地はロシア沿岸や朝鮮半島。
- 日本では繁殖せず、秋から冬にかけて渡来する。
- 巣は地面に浅いくぼみを作り、卵は保護色で目立たない。
- 1回の産卵は2〜3個。ヒナは早成性で孵化後すぐに歩ける。
6. 日本での観察状況
- 東京湾、伊勢湾、有明海、瀬戸内海などで冬季に観察可能。
- 特に大きな群れは有明海や三重県沿岸で見られる。
- 日本の個体数は世界的に見ても限られており、保護対象となっている。
7. 類似種との違い
種類 | 主な違い |
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クロツラヘラサギ | 白い体とヘラ状のくちばし。 |
ダイシャクシギ | 長く下に湾曲したくちばし。 |
ハマシギ | 小型で群れを作るが、体色は灰褐色。 |
ミヤコドリ | 赤いまっすぐなくちばし、黒白の体色が特徴。 |
8. 文化との関わり
- 名前の「都鳥」は万葉集にも詠まれ、古くから日本人に親しまれてきた。
- 在原業平の歌「名にし負はば いざ言問はむ都鳥…」で有名。
- 古典文学や和歌に登場する象徴的な鳥であると同時に、現代では干潟のシンボルにもなっている。
9. 保護と環境
- 日本のミヤコドリは環境省レッドリストで「絶滅危惧II類(VU)」に指定。
- 干潟や浅瀬の埋め立てによる生息地の減少が大きな脅威。
- 保護区の指定や干潟の保全活動が進められている。
まとめ
ミヤコドリは、赤いくちばしと黒白の体色が特徴的な美しい海鳥です。古来より和歌に詠まれ、現代でも干潟の象徴として人々に親しまれています。干潟の環境を守ることは、ミヤコドリをはじめとする多くの野鳥の未来を守ることにつながります