
オオヨシキリ(Acrocephalus orientalis)|夏の湿地に鳴き響く、賑やかな葦原の歌い手
オオヨシキリは、夏になると日本各地のヨシ(アシ)が茂る湿地や川辺に現れる野鳥です。騒がしく特徴的な鳴き声で知られ、初夏の風物詩として親しまれています。
1. 基本情報

- 学名:Acrocephalus orientalis
- 英名:Oriental Reed Warbler
- 分類:スズメ目 ヨシキリ科
- 全長:約18〜20cm
- 分布:日本全国で夏鳥として渡来。冬は東南アジア方面へ渡る
- 生息地:湖沼や川沿いのヨシ原、湿地
季節別の出現状況
季節 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
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オオヨシキリ | ー | ー | ー | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ー | ー | ー |
2. 外見の特徴
- 全体的に褐色で、背中はオリーブ褐色、腹部は淡いクリーム色。
- 頭頂部はやや平たく、くちばしは細長く、昆虫採取に適した形状。
- 目の上に淡い眉斑があり、鋭い印象の顔立ち。
3. 鳴き声
- 「ギョギョシ ギョギョシ ギョギョシ…」という大きな声が特徴。
- 主にオスが縄張りを主張するために鳴き、夜間でもさえずることがある。
- 風に揺れるヨシ原を共鳴させるような声量。
4. 生態と行動
食性
- 主に昆虫やクモ、小型の甲殻類など。
- 空中で虫を捕らえることもある。
習性
- オスは目立つ場所でさえずり、メスを誘う。
- ヨシの茎の間を移動しながら餌を探す。
- 飛び方は直線的でややぎこちない。
5. 繁殖
- 繁殖期:5月〜7月
- ヨシの茎にカップ型の巣をつくり、5〜6個の卵を産卵。
- メスが主に抱卵、オスも育雛に関わる。
- カッコウなどによる托卵を受けやすい。
6. 日本での観察状況
- 北海道から九州まで広く分布。
- 水辺のヨシ原があれば都市近郊でも観察可能。
7. 類似種との違い
種類 | 主な違い |
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コヨシキリ | 体がやや小さく、さえずりが穏やかで音量控えめ |
セッカ | 草地に生息、尾羽が短くホバリング飛行 |
ウグイス | 森に多く「ホーホケキョ」と鳴く |
オオヨシキリ | ヨシ原に生息、非常に大きな声で鳴く |
8. 文化との関わり
- 夏の季語として俳句や詩に詠まれる。
- 「声のカレンダー」として田園風景に溶け込む存在。
9. 保護と環境
- ヨシ原の減少により、地域によっては個体数が減少。
- 湿地開発、水質悪化が主な脅威。
- 保全が進んだ地域では安定した繁殖が確認されている。
まとめ
オオヨシキリは、賑やかなさえずりで初夏を告げる、親しみ深い野鳥です。ヨシ原に隠れながらも響くその声は、日本の田園風景に欠かせない音風景とも言えるでしょう。水辺の散策中に鳴き声が聞こえたら、ぜひ姿を探してみてください。
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